愛媛大学医学部附属病院

投稿日

働き方改革の必要性:医師の長時間労働は深刻な社会問題となっており、特に麻酔科医は人手不足が度々医療現場で深刻な課題となっており、長時間労働が一般的であることも懸念されています。 また、医療技術の進歩により外科手術が増加しており、それに伴い麻酔科医の需要も高まっています。 この課題への対応として、働き方改革がますます重要視されています。2024年から始まる医師の働き方改革に伴い、各病院では様々な対応策が検討されています。

厚生労働省による医師の働き方改革概要では、下記のように記載されています。 ehime 01

長時間労働の要因

  1. 医師のスキル向上の必要性:麻酔科医は手術前の患者評価、麻酔計画の策定、手術中のモニタリング、手術後の回復状況確認など、多岐にわたる業務に高度なスキルが要求されます。 医師のスキル向上は、全体の業務負担を軽減します。その為にも人材育成に専念できる時間を確保する点が極めて重要です。
  2. 手作業による事務作業:麻酔科医は他の医師やスタッフとの連携、手術スケジュールの調整が必要です。手術室の状況の変化や緊急手術により、スケジュール変更が発生します。 しかし、多数のスタッフとの調整が必要になり、またその調整によって派生的に他の調整が必要になるなど、調整に多大な労力が必要になりますが専門的な内容を含むため、医師以外の方に調整をお願いすることも困難です。 結果として、この事務作業が医師の長時間労働にもつながっています。

課題

医師としての本来の業務時間の確保と事務作業の削減

医師の時間外労働を削減するためにまず、事務的な仕事を減らす事が重要です。 もっとも大きな負担になっている事務作業の一つが、医師のシフトスケジュール作成です。 医師のスケジュール管理は単に出勤の有無だけでなく病院独自のシフトルールや、医師のスキルレベルや成長(教育)を考慮する必要があります。 大学病院の場合は、さらに院内業務だけでなく外勤も加わり、シフト作成は極めて複雑であり結果として、時間外業務が頻繁に発生します。

ソリューション(取り組み)

予定PLUS+(月次ドクター・日次ドクターの導入)

麻酔科医のシフト作成に関する事務作業を軽減するために、Aquilaのスケジュール管理システム『予定PLUS+』の月次ドクターと日次ドクターサービスを導入頂きました。 麻酔科医を対象としたソリューションとして、これは日本初の取り組みとなります。 月次と日次は連携しており、AIシステムを搭載したクラウドベースにより週単位で担当する手術を自動割当てることが可能です。

  1. 最初に各医師は自分の希望を記入する
  2. 次にAIエンジンが制約条件に従って最適な月次割り当てを作成する
  3. 最後にAIエンジンは各待機的手術を適切な麻酔科医とマッチングする

手術スケジュール変更は頻繁に発生しますが、日付を指定して再配置を行えば何度でも最適化を行うことが可能です。 希望収集からシフト割り当てまでを一貫したシステムで行うことができ、勤務数の履歴より公平性も保たれています。 医師の中でもスキルレベルを最初に設定することで、医師の成長も考慮した2名体制(フロントとバック)がつくように自動で配置されるシステムとなっています。

外部システムとの連携(業務回避シフトの自動入力)

大学病院と連携している他の病院で外勤をする麻酔科医の管理は、別のシステムで記録されています。 従来手動での入力と目視による医師の選定が行われていました。 しかし、『予定PLUS+』の導入により外勤記録システムと連携が実現し、シフト割当に自動入力され外勤を考慮したスケジュール作成を自動で行ってくれます。 これにより手作業が削減され、業務効率が向上し、時間とリソースの効果的な活用が可能になりました。

結果

これまで、麻酔科では医師の勤務管理は主に手作業で、エクセルなどを利用して行われていました。 このプロセスはスケジュール管理者の経験と努力によって支えられており、スキルレベルを考慮する必要があるため、特定の担当者しか作成することができず、業務が属人化していました。 しかし、予定Plusの導入後は手作業が大幅に削減され、スピーディーに勤務管理を行うことが可能になりました。

スケジュール管理 | スケジュール管理 | 導入前 | 導入後 | |— |— |— | | 月次 | 7 時間/月 | 1 時間/月 | | 日次 | 8 時間/週 | 4 時間/週 |

病院のニーズに適応し、要望に柔軟に対応していただき、システムが使いやすく進化していく過程で、共に成長し形になっていくのを実感しました。

スケジュール管理者からのフィードバック

不規則に存在する外勤や、手術件数の増加、手術申し込み時間と実際にかかった時間の相違、様々な勤務形態の麻酔科医(勤務日数や夜間業務の可能回数の違い)の存在、専門医取得のための経験必要症例数の管理、業務回避依頼の取りまとめなど、様々な要因が麻酔科医の勤務予定作成を複雑にしています。 これまでは、これらを考慮しながら感覚で予定表を作成していたため、予定表を作成するまでの準備や、その後の配置、出来上がった後の偏りやミスのチェックに膨大な時間を費やしていました。 本システムを使用することで、まず予定表作成までに必要な準備が大幅に削減されました。 業務回避情報や勤務形態情報はすでに入力されてまとめられた状態となっており、外勤担当者は移動時間まで考慮された状態で、内勤の割り当てをAIが自動で考え配置してくれます。 また特殊な麻酔など担当医をこちらであらかじめ指定したい場合などもPIN固定などのシステムがあり柔軟に対応可能となっています。 これらのシステムは使用すればするほど学習し改善していくため、より効率的な運用ができるようになり、働き方改革だけでなく、病院の経営改善にも貢献できるソリューションであると感じています。

結論

医師の働き方改革は当病院において、AIエンジン搭載のクラウドベースの麻酔科医シフト割り当ての導入により、顕著な成果を上げています。 長時間労働の削減、事務作業の合理化、医師の本来の業務に集中するための時間確保など、様々な側面でポジティブな変化が見られています。 シフト作成の合理化により、医師はより柔軟なスケジュール管理が可能となり、人材育成を行う時間の確保により、全体のスキルの底上げを図り、組織全体のパフォーマンス向上が見込まれます。 また、時間外業務を減らす事でプライベートな時間を確保できます。これにより、医師たちは仕事と生活のバランスを取りやすくなり、疲労の軽減やメンタルヘルスの向上に寄与することが期待されます。 医師たちがよりリフレッシュされ、やりがいを感じながら働くことができれば、それが最終的には患者への質の高い医療提供に繋がるものと信じています。

愛媛大学医学部について

愛媛大学医学部は県内唯一の医育施設として昭和48年(1973年)に設置され、愛媛大学医学部附属病院(愛大病院)を昭和51年(1976年)に開院し、これまで愛媛県を代表する地域を守る総合病院として機能しています。 愛大病院は、現在、24の診療科、48の中央診療施設、644の病床数、職員数は2000を超える規模で、県内唯一の特定機能病院として、高い水準の医療を患者さんに提供すべく、病院スタッフが万全の体制で一丸となり懸命に従事しています。

新規外来患者数: 14,469 (2022年)
初回入院患者数: 7,974 (2022年)
病床数: 626 床
手術全身麻酔件数: 3,943 (2022年)
麻酔科医師数: 32 名
住所: 〒791-0295 愛媛県東温市志津川454

Linkedin記事